【 松崎町 】−松崎港は風待ち港として古くから重要視され、伊豆地方では下田港に次ぐ繁栄を見せ、多くの廻船問屋が軒を連ねました。漁業も盛んな地域で近海で採れた多くの魚介類は加工され大消費地だった江戸に運ばれ鰹節製造も発展しました。又、左官の技術者が多く気候的な背景、富裕層が多いなどの条件が重なった事から建物の仕上げに海鼠壁を採用する家が多く、中には建物全体が海鼠壁にしたり、蔵の扉に鏝絵を施す例も見られます。
【 伊豆文邸 】−伊豆文邸は静岡県賀茂郡松崎町松崎に位置する町屋建築で、明治43年(1910)に呉服商の店舗兼住宅として建てられました。案内板には木造2階建てと紹介されていますが、一見すると主屋は土蔵造りの店蔵にしか見えません。1階の下屋庇が大きく張り出しているのは松崎町に残されている他の町屋建築にも見られる特徴の一つで、代名詞ともなった外壁全面が海鼠壁で仕上げられています。桁行は6間半と一般的な町屋建築と比べると規模が大きく、敷地背後に配された2棟の土蔵も略全面海鼠壁で、下屋庇を支える柱の下回りも海鼠壁となっています。内部の意匠は簡素な印象を受けましたが、ガラスや欄間、床の間には細かな細工が見られます。
スポンサーサイト
|