旅籠紀伊国屋(湖西市新居町)概要: 旅籠紀伊国屋は静岡県湖西市新居町新居に位置している町屋建築(旅籠建築)です。紀伊国屋は元禄16年(1703)、紀州藩(徳川御三家:和歌山県和歌山市)が宿泊で利用したことから正徳6年(1716)に屋号を「紀伊国屋」に改めたとされます。当主は代々疋田弥左衛門を世襲し、新居宿の本陣が疋田弥五助家が担っている事からも相当な名家だった事が窺え基本的には幕府の許可が必要な旅籠を生業としていました。
格式は高く、延享2年(1745)には帯刀、5人扶持だったとされ、紀州藩の飛脚役所を兼ねた時もあったとされます。紀州藩の御用宿として家運が隆盛し主屋には12室、裏座敷には2室の宿泊室が配され、当時の新居宿の旅籠の中では最大級の規模を誇り、昭和34年(1959)まで宿屋として営業していました。
現在の旅籠紀伊国屋の建物は明治7年(1874)の火災で焼失後に再建されたもので木造2階建、切妻、桟瓦葺、平入、外壁は下見板張り縦押縁押え、2階外壁両側には防火、延焼の為に袖壁を儲け、正面には現在でいうベランダ風の外廊下が前に張り出し出桁造りとなっています。
外廊下から上部の屋根を支える柱を外側に傾ける事で、一般的な町屋とは異なる印象を与え、2階の手摺や、奥座敷の床の間の意匠、天井の高さ、階段周り配置など当時の旅籠建築の特徴が残されています。新居宿旅籠紀伊国屋は明治時代に建てられた江戸時代の旅籠建築を踏襲した建物として貴重な事から湖西市指定文化財(建造物)に指定されています。現在は「新居宿旅籠紀伊国屋資料館」として一般公開され東海道新居宿の資料などが展示されています。
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