湯前神社(熱海温泉)概要: 湯前神社は静岡県熱海市上宿町に鎮座している神社です。湯前神社の創建は諸説あり一説には天平勝宝元年(749)、ある子供の夢枕に少彦名神が立ち、源泉の場所と効能を告げました。
早速村人がその場所を訪れてみると滾々と温泉が湧き出し、温泉を浴びると忽ち諸病が平癒しました。村人は神意に感謝し源泉近くに祠を設けて少彦名神の分霊を勧請して末永く信仰したと伝えられています。
もう一説は天平宝字年間(757〜765年)、万巻上人(金剛王院の僧:箱根山に建立されていましたが現在は廃寺)が熱海の海の異変に気付き調べてみると海中から温泉が湧き出し多くの魚介類が死滅していました。万巻上人は魚介類を弔うと共にこれ以上の犠牲を避ける為、祈祷により源泉を内陸部に移し湯前権現を勧請したと伝えられています。
湯前神社は康永2年(1343)に編纂された伊豆国神階帳(国内神名帳)で従四位上に列している「熱海の湯明神」とされ、延長5年(927)に編纂された延喜式神名帳に記載されている式内社「久豆弥神社」の論社でもあります。
中世に入ると広く知られるようになり、特に久留米藩主有馬氏が篤く崇敬し7代藩主有馬頼僮は宝暦8年(1758)に石燈籠を安永9年(1780)には石鳥居を奉納しています。
又、湯前神社境内に隣接している大湯は徳川家康や徳川義直(家康の9男、尾張徳川家の始祖)、徳川頼宣(家康の10男、紀州徳川家の始祖)が入湯したことでも知られ、江戸時代を通してこの源泉が汲み上げられ江戸城に運ばれました。この故事から源泉を湯前神社に奉納して祈祷してから市中を練り歩く「湯汲み道中」が行われています。
境内の「源実朝の歌碑」は建保2年(1214)、実朝が二所詣で(箱根権現と伊豆山権現を詣でる事)で熱海温泉に立ち寄った際、「 都より 巽にあたり 出湯あり 名はあづま路の 熱海といふ 」詠ったもので熱海温泉の縁の深い当社に建立されました。祭神:少彦名神。
湯前神社の文化財
・ 石鳥居-安永9年-高345p,横幅410p,柱太105p-熱海市指定文化財
・ 石燈籠-宝暦8年-高205p,横幅75p,柱太105p-熱海市指定文化財
・ クスノキ-樹高17m,幹周7.2m-熱海市指定天然記念物
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